農業を営む父が亡くなり、たくさんの農地が 還されました。農地を相続する場合には、何か注意することはありますか?
受遺者が相続人以外のときには農地法の許可を得る必要がありますのでご注意ください。
農家の方の場合、農業を継ぐ相続人が単独ですべての農地を相続することが多いようですね。
ところで、農地の所有権を移転する場合、原則として農業委員会の許可が必要です。農地として使用したい人に所有権を移転する場合、譲受人が農業従事者として 適格かどうかという観点で審査が行われますし、農地以外の用途として使用するために所有権を移転する場合には、そのような転用が一定の基準に合致しているかどうかが審査されます。
しかし、相続を原因として農地の所有権が被相続人から相続人に移転する場合には、農地法の許可は不要とされていますので、農地以外の相続と同様、話し合いによって相続財産の帰属を決めることができます。
遺言がある場合は、その内容によって許可の要否が変わります。
相続人のどなたかに「相続させる」遺言の場合は、農地法の許可は不要です。また、「Aに包括的に遺贈する」という遺言は包括遺贈と呼ばれていますが、この場合にも農地法の許可は不要とされています。
しかし、「どこそこの農地をBに遺贈する」というように、遺贈する物件が特定されている場合(特定遺贈と呼ばれます)、受遺者が相続人以外のときには農地法の許可を得る必要がありますので、ご注意ください。
ところで、農地を相続した場合には、相続発生から10か月以内に農業委員会に届出をしなければならないこととされています。これは、現在、耕作放棄地が増え続けているため、農業委員会が農地の権利取得者を把握し、農地取得者が農地を利用できない場合には、農業委員会が貸借などを斡旋するねらいがあるためといわれています。この届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした場合には、10万円以下の過料が課せられることがありますので、ご注意ください。