亡父名義の建物を取り壊して土地を売却する予定です。わざわざ費用をかけて相続登記をする必要があるのでしょうか?

原則として、発生した事実に沿って登記する必要があります。

不動産の登記制度は、所有権などの権利がどのように発生し、移転し、消滅したかということを公示するものですので、原則として、発生した事実に沿って登記する必要があります。

したがって、すでに名義人であるお父様が亡くなっている場合、売却をする前に相続登記をしておく必要があるのです。

この際、誰の名義で相続登記をするかがしばしば問題になります。たとえば、売却代金を相続人で分け合う約束がある場合、その割合と同じ割合の共有名義で相続登記しておくのがよいでしょう。

仮に、土地は相続人の内のひとりが相続し、売却代金は他の相続人と分け合うこととした場合、売主と売却代金の配分先とが異なることとなり、贈与税が課税される可能性もありますのでご注意ください。

なお、建物については取り壊す予定とのことですので、必ずしも相続登記をする必要はないように思われます。建物を取り壊した場合には建物の滅失登記を申請することになるのですが、滅失登記の申請をする際に建物の名義人が亡くなって いるときは、相続登記をせず、相続人のひとりが申請人となることができるからでただ、気を付けていただきたいのは、建物の相続登記はしないとしても、建物を 誰が相続するのかは、遺産分割協議で決めておかなければならないということで す。

相続が発生した段階で建物は相続人全員の共有状態になりますので、そのままでは、相続人全員が合意しなければ建物を取り壊すことはできません。しかし、遺産分割協議によって特定の相続人が相続することになっていれば、その方の意思で取り壊すことを決めることができるからです。