兄が行方不明で、音信不通の状態です。父の相続手続きは、どのように進めればよいのでしよう?
まずは家庭裁判所で相続人を「不在者」として認定してもらわなければいけません。
不在者財産管理人には、司法書士などの法律の専門家が選任されるのが通常です。選任を受けるためには、お兄様が行方不明になった経緯、心当たりの場所や親しい知人等への調査結果、場合によっては警察による捜索の状況等を報告書に取りまとめ、家庭裁判所でお兄様を「不在者」として認定してもらわなければなります。
遺産分割協議は相続権のある方が全員で合意しないと成立しませんので、ご質間のように、相続人に行方不明の方がいる場合には、行方不明者に代わって遺産分割協議に加わる「不在者財産管理人」を家庭裁判所で選任してもらう必要がありません。
不在者財産管理人が選任されたとしても、直ちに遺産分割協議に着手できるわけではありません。というのも、不在者財産管理人は、不在者の財産を維持・管理することが本来の職務であり、遺産分割協議のように新たな法律行為をすることは認められていないからです。 そこで、選任された不在者財産管理人は、遺産分割協議をするため、改めて家庭裁判所に対し「権限外行為の許可」を申し立てる必要があるのです。
この申立てに際しては、相続人間で取りまとめた遺産分割協議の案文を添付書類として提出します。家庭裁判所は、提出された分割案が「不在者にとって不利益 な案となっていないかどうか」を審理して許可するか否かの判断をするのです。このため、お兄様に何も相続させないような分割案や、法定相続分を大きく割り込む 分割案の場合、家庭裁判所の許可が受けられない可能性もありますので、ご注意ください。
また、このような煩雑な手続きを避けるためにも、相続人に行方不明者がいるような場合には、生前に遺言を遺しておくとよいでしょう。