長男が多額の借金を抱えており、遺産を相続させたくありません。そのような制度があると聞きましたが・・・
相続人から相続権をはく奪する制度があります。
民法八九二条に規定される「推定相続人の廃除」のことですね。推定相続人の廃除とは、遺留分【参考:相続人の一人が父を介護していた】を有する相続人から相続権をはく奪する制度です。
廃除された推定相続人は相続人の地位を喪失しますので、遺留分を請求する権利も失います。
特定の法定相続人に遺産を相続させたくない場合に、他の相続人や第三者に生前贈与や遺贈をしたり、その相続人の相続分をゼロと指定する遺言を遣したりすることが考えられますが、このような場合でも遺留分を請求する権利までは失われませんので、必ずしも思いどおりの結果が得られるわけではありません。
そこで、民法は、遺留分を有する相続人が、①被相続人に対して虐待をしたり、②被相続人に重大な侮辱を加えたり、③その他の著しい非行に及んだときに、被相続人が家庭裁判所に対し、その相続人の廃除を請求することができる制度を設けたわけです。
しかし、虐待、重大な侮辱、著しい非行がどのようなものかを一般的に定めることは困難です。判例では「はなはだしい非行はあったがそれが一時の激情による場合には著しい非行とはいえない」と指摘したもの(大審院大正二年七月二五日判決)をはじめ、被相続人とその相続人との不和の原因、暴行や侮辱的な言動または非行に及ぶに至った経緯などが、総合的・客観的に判断されなければならないとされています。
ご質問のケースでも、ご長男が多額の借金を抱えているというだけの理由では、著しい非行として廃除が認められる可能性は低いと思われます。借金をするに至った経緯、借金とあなたとの関わり等について、もう少し詳しくお話をうかがう必要がありそうです。